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歯科医療が日本を救う

歯科医療が日本を救う。これは、去年の日本歯科医師連盟の標語になっています。

この理由は、歯科医療が国民の病気リスクを変えるというやや大袈裟にも思える表現をしています。

その理由、
歯周病は、国民病!
   35歳以上の約8割が既に歯周病になっているといわれています。

お口の健康と全身の健康は、密接に関連しており、歯科医療によってさまざまな疾病のリスクを抑制できることが明らかになってきました。

歯周病から考えられる病気は、次にあげられます。
1、脳梗塞
2、アルツハイマー型 認知症
3、肺炎 (歯周病が原因で誤因性肺炎に)
4、バージャー病
5、骨粗鬆症  (骨粗鬆症で歯周病が進行するリスクは、通常の2倍になります。)
6、動脈硬化
7、低体重児出産、早産  (通常の7倍以上)
8、糖尿病  (糖尿病は、歯周病の合併症といわれています。)
9、心臓病  (心臓病を引き起こすリスクは、通常の3倍になります。)

このように、歯周病は、万病のもと、と、いわれています。

また、歯周病は、生活習慣病と深い関わりがあります。
歯周病は、歯の喪失をもたらすだけでなく、その細菌がつくる毒素が血液中に入ることで、全身の健康に悪影響を及ぼします。
実際に統計を取ると、平成25年で、歯周病が重度なほど年間医療費が高くなっています。
勿論、無歯顎の患者さんが、ダントツで1位です。これは、年齢によるものとも考えられます。

また、統計では、歯の本数が0~4本の人は、20本以上ある人に比べ、年間医科医療費が約19万円高いという結果が出ています、(平成25年香川県 歯の健康と医療費に関する実態調査です。)このことから、歯の本数が少ない人は、糖尿病、高血圧において医科医療費が高くなる傾向が見られました。

これとは逆に、定期的な歯科健診を受けている人ほど、年間医科医療費が少ないこともわかってきました。歯科健診では、歯周病
虫歯のチェックだけでなく、ブラッシング指導など、様々な観点から診査を行います。
(平成25年香川県 歯の健康と医療費に関する実態調査です。)

寿命には、平均寿命と健康寿命があり、健康寿命とは、、日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間の事です。
平均寿命と健康寿命の差は、約10年の開きがあり、健康寿命を伸ばすことで、医療費の削減が可能になるそうです。

今、国民医療費は、毎年約1兆円ずつ増大しており、国や国民の負担は大きくなってきています。(ちなみに国民医療費に占める歯科医療費の割合は年々減少し、平成27年度では、約7パーセントです。)

増大していく日本の医療費に歯科が出来ること、
健康寿命を伸ばすように、定期的な歯科健診が重要とされています。

簡単に言ってしまうと、歯の健診を受けていっぱい歯が残っている人は、年間の医療費も少なく、健康寿命が長くなる。
だから定期健診を受けてください。という事になります。


歯科で麻酔をした後が痛くなるのは何故 ?

当院では、痛くない麻酔をするために、先ず表面麻酔を患部に貼ります。
その、表面麻酔は、実は歯科の材料ではなく、医科で使われる物を使用しています。(薬事法では、認められていますが、材料代は、悲しいながら自院負担です。)

注射麻酔の前にその表面麻酔薬をはり、ある程度時間をおいた後に皮膚に針をさす角度を気にしながら、麻酔をする様にしています。
麻酔薬は、
通常の歯科用の麻酔薬を使います。

が、麻酔の針は、すこぶる細い針を使用しています。

麻酔時は、痛くないのですが、麻酔した部位が麻酔が切れた後、痛くなる場合があります。

非常に不快ですよね。

原因は、注射麻酔した部位が細菌感染、炎症を起こしたのと組織が麻酔の液で炎症を起こしたと考えられます。

お口の中には、数多くの細菌が存在し、口腔内の環境を保っています。
細い針とはいえ、粘膜を傷つけるのは事実です。要は、針を刺した部位が口腔内の細菌により感染してしまうわけです。

腫れあがる事は、感覚のみで少ないのですが、ただれてしまったり、場合により、粘膜がじくじく潰瘍状になる事もあるようです。
では、どうしたら麻酔が切れた後、麻酔した部位が痛くなく出来るのでしょうか?

麻酔した部位は、注射したため、針の傷が残ります。
また、麻酔液は、注射した部位から周りの組織に回っていきます。
麻酔液は、強い酸性です。組織にもダメージを与えます。

麻酔、治療した部位の術後の痛みの除去。
次のような具体的な方法があります。

1、口腔内の細菌の環境を整える。
  つまり、先ずお口の中の痛くなる細菌、つまりは化膿する細菌を除去します。
  簡単に言うと、クリーニングですね。そうすれば、麻酔した部位の痛みが出なくな
  る場合が多い気がします。麻酔の液の組織に対する炎症反応は残りますが。

2、化学的に麻酔した部位の炎症を抑えるため、鎮痛消炎剤を飲んでしまう。
  (保険診療では、あまり認められていないのですが、対応は可能です。具体的には
   ロキソニンなどの消炎剤を服用します。)

3、麻酔した部位に感染を抑えるため、特殊な薬を塗る。
  (残念ですが、海外から輸入している医薬品ですので、薬事法では認可されていま
   すが、適応症ではない為、診療行為そのものが自由診療になってしまいます。)
   この治療法では、ダメージを受けた組織も回復します。
4、乳酸菌(ロイテリ菌)を用いて 

これらを、使い分ける事によって、麻酔した部位が痛くならなくなる筈ですが、勿論、
例外もあります。

頻繁に、麻酔した部位が痛くなる患者さんには、通常の麻酔薬とは、少し性質が違う歯科用の麻酔薬を選択する場合もありますが、通常の麻酔薬よりは、麻酔が切れるのが早くなります。

大方、あくまでも針を刺した傷、組織の損傷が起こした訳ですので、時間が経てば段々と治ってくると思います。
そういう面では、麻酔をしないで済む治療が、お勧めです。(なかなか難しいですが。)

麻酔の痕が痛い場合は、速やかに担当した歯医者さんにその旨を次回の治療の際に申し出てください。


歯の詰め物が変色したので詰め直しをしたら、もっと変色してしまった場合

高倉歯科マインドクリニックでは、マイクロスコープを使った精密かつ確実な治療を得意としているのですが、マイクロスコープときいてもピンとこないでしょうし、それよりもとにかく治して!痛みを止めて!という方がほとんどです。

今回は、実際の患者さんの治療例をあげて、マイクロスコープがどのように使われているのかを少し解説したいと思います。

詰めものが変色して、詰め直しをしたら余計に削られたあげく更に変色!

数年前に、左上の前歯(1番と2番)の間に小さな虫歯があったので、近所の歯医者さんで治療を受けたそうです。その際、虫歯に沿って大体1.5mmくらいの削り、白い色のCR(コンポジット・レジン)を充填をして治療完了。

それから数年後、CR充填した部分の変色が気になってきたそうです。もちろん経年による多少の変色は避けられません。CR(コンポジットレジン)は樹脂が主成分ですので、時間が経つと変色してしまうのです。数年で黄色っぽく変色しがちです。そして歯自体も年齢によって変化します。たとえ詰め物自体が変色していなくても、歯自体が変色すれば、詰め物が浮いて見えてしまいます。それはさておき、ある程度の変色・違和感は仕方のないことかもしれませんが、前歯ですし、一度気になったら、気にしないほうが難しいでしょう。

そこで、別の歯医者さんでCRの詰め直しをしてもらったところ、なんと歯の見えている部分1/3くらいごっそり削られてしまったのです。

最初はよかったものの、なんと、その後1年もしないうちに今度は真っ茶色に変色してしまいました。最初に削った部分よりも大きく削られた上に詰められたものですから、余計目立つことに。

また別の歯医者さんで詰め直しをしてもらいに行ったところ、「かなり大きく削られてるから、詰め直しをしても色の違いが目立ってすぐ気になっちゃうかもしれない。」と言われ、そのままにすることを薦められたそうです。変色しているだけで、歯に悪影響があるわけでないという視点では確かにそうかもしれません。

ですが、患者さんにとってみれば、最初は、本当に小さな虫歯だったのに…。毎日鏡を見て落ち込んで、何も手につかない状態です。こんな汚い歯に一生悩まされるなんて耐えられない。大きく削った歯医者が憎くて仕方ない!!と。

ごもっともです。

今では、出来る限り歯を抜かない、削らない、という方針の歯医者さんが増えてはきていますが、そうではないところのほうが多いでしょう。これは保険を使う場合、できる治療が限られているためです。

当院では、保険を使った一般的な治療と保険を使わない治療(自由診療)、それぞれ行っています。

今回のケースは、自由診療で行ないました。どのような治療を行ったのか解説します。

変色部位を削り再度詰め直す

とにかく変色部分をなんとかしなければなりません。

どうしても現在変色している部位を削る必要があります。
同時に、なるべくご自身の歯を削らないようにする必要もあります。

出来る限り歯を削らず、変色部位である詰め物を削って、再度詰め直す。通常でしたら、ルーペだけで行えるかもしれませんが、三回目の詰め直しであることと、もう歯を削られたくないという患者さんの思いに応えるために、マイクロスコープで拡大して精密に行なう必要があると判断しました。

マイクロスコープを使用するので保険適用外となり治療費は高くなってしまいますが、治療方針に納得していただけました。

実際に行った治療の流れ

さあ、治療の開始です。

歯科マイクロスコープを使って削る量を最小限に抑える

防湿は、簡易防湿で大丈夫でしょう。

削るのは歯ではないのですが、多少違和感を感じる患者さんもいらっしゃいますので、軽く麻酔。

詰め物をきれいに詰める為、歯と歯の間をセパレーターという器具で広げておきます。
 
患者さんの変色した詰め物のみをなるべく削るため、マイクロスコープで拡大し、見ながら丁寧に、慎重に、細心の注意を払って削っていきます。

この様子は動画として録画しています。

CR充填は、全部剥がさなくても、ボンディングという接着剤を塗り光照射すると、一層はがしただけでも再充填が可能な場合もあります。

色合わせは、マイクロスコープの光、自然光、それらを比較しながら、フローの高い(流れの良い)CR充填材で何層か塗っていく様にします。

この治療にかかる時間は、おおよそ60分ほど。

治療後は、録画撮影した記録を見ていただき、ご自身の歯をなるべく削っていないことをご自身の目で確認していただきました。

無事、治療完了し、ご来院時とは全く違って笑顔を見ることができました。どんなに難しい治療でも、この笑顔のために頑張れるのです。

きちんと仕上げた歯は、一体どこを削ったの?と驚かれることもしばしばです。

数年後、変色が気になってきた時は・・・

また、詰めた部分の変色部分を削り、再充填することになります。

保険診療では、使用できる詰め物の素材が限定されてしまいますが、自由診療であれば耐久性や見た目に拘わることができます。たとえば当院では、白い詰め物でしたら、e-MAXという変色しにくく透明感のある優れた素材の提案もさせていただいております。

e-MAXの場合、どうしても土台となる歯を少し多めに削る必要があります。

ですが、マイクロスコープを使えば、その量を出来る限り抑えることも可能です。


ラバーダム

何のためにするの?ラバーダムのメリットとは?

ラバーダムとは、ラバーバーダム防湿(ぼうしつ)法という歯の治療方法で使うものです。

「ラバーダム」という言葉は耳慣れないと思いますが、実はみんな知っているものです。医療ドラマで患者さんが手術を受けるときに掛けられているゴムっぽいのっぺりとしたシーツ。あれです。あれの歯医者さん版です。

ラバーバーダム防湿(ぼうしつ)法とは、治療する歯をゴム製のシートを使って隔離してできる限り無菌的に治療を行う方法です。もちろん治療するときには清潔な器具を使いますが、清潔な器具を使うのは当然として、お口の中自体が問題なのです。

なぜ防湿なのかといいますと、口の中は唾液が常にでており水分でいっぱいです。湿気が多ければカビが生えるように菌は水分大好きです。治療するお口の中には沢山のばい菌が無数に存在しています。炎症が起きているところが汚れていると治りにくくなります。水分いっぱい・菌もいっぱいのお口の中を治療するには、除湿・無菌がベストなわけです。

口の中全体を除湿するのは不可能です。部分的、治療する部位だけでよいのです。唾液などに含まれる周りからのばい菌の侵入を防ぎ、病気の原因菌が少なくなれば治りやすくなります。ラバーバーダム防湿(ぼうしつ)法はそれを実現する治療方法なのです。
また、治療の際には、他の組織(舌、頬)などの柔らかい組織から、治療器具での傷を防ぐ役割もします。
顕微鏡で治療をしていると、見えるのは治療する部位に限られます。他の組織の状態を確認することが出来ません。ラバ―ダムをする事によって治療する私達も安心して治療に集中する事が出来ます。

歯の治療とくに根管治療においては、ラバーダムは必須です!!

早く治りやすくなる&安全

ラバーダムを付けないで治療した歯と、ラバーダム防湿法をつかって治療した歯を比較すれば、確実にラバーダムを使った方が治りは早いです。現在の日本において根の治療の成功率は、約50%といわれています。つまり、2本根管治療した歯の1本は、後から痛くなってやり直すという事です。当然ラバーダム防湿をした方が治りが早いだけでなく、治療部位を「ラバーダム」で清潔に維持することで、治療した部位の再感染のリスクが減り、詰め物や被せものも長持ちしやすくなります。

また、治療中に出る削りかすや使用する薬剤は体に良くないもの、不味いものもあります。勿論、それらは、治療を確実に成功させるために必要な薬剤なのですが、それらを飲み込まずにより安全に治療できるというメリットもあります。

デメリットは、ちょっと息苦しい

お口にゴムのマスクを掛けたりしますので慣れないうちは少し息苦しい感じがするかもしれません。鼻づまり等で鼻呼吸ができない方は行うのが難しいかもしれません。ただ、慣れた方ですと、寝て起きたら治療が終了していた!などということもあるくらい気にならなくなる方もいます。また、喉の奥に設置する道具も有るので、喉の奥が敏感な方は使用するのが難しいかもしれません。

全体として考えると、より長持ちする良い治療を出来るという点でメリットの方がはるかにおおきいと思います。

 

ラバーダム=ラバーのダム

治療する歯、もしくはその近辺の歯にくさび状の金具をひっかけ、それ以外の歯をゴムのマスクで隠します。つまり、治療に必要最低限の歯だけを露出させるようになっています。また、くさび状の金具だけでは、だ液が漏れてきてしまい、感染の可能性がある為、ダムと呼ばれるパッキンみたいな材料があり、ダムで歯の全体を覆います。これは、実はラバ―ダムで治療する際、隠し技的な存在でラバ―ダムをしていてもそれだけでは、完全に防湿する事は不可能だからです。やはり、ゴムだけでは、薬剤などは漏れてお口の中に入ってしまいます。ダムを使用する事で治療している歯に使う薬剤が、患者さんのお口の中に入るのもふせぎます。ラバーダム防湿法を使うのであれば、ダムは必須アイテムです。(きっぱり)

こんなに便利な器具なのに、使用していない歯科医院が多いのが現状です。

何故、ラバーダムをやらない歯科医院が多いのか?

数年前までは、保険診療に算定項目がありましたが、現在では、包括治療になってしまっているので、時間、手間、材料代のコストを考えると使わない診療の方が歯科医院の収益が上ります。これを補うには、人件費、材料代などのかかる費用が必要になります。

つまりは、保険診療でなく自由診療になります。

ラバーダムを使っても保険診療の点数になりませんし、ラバーダムを使わないといけない決まりはありません。使わない歯医者が多いのは当然の結果です。ですが、治療の精度をあげる上では絶対に必要なのがラバーダムです。

患者さんの神経ない歯を出来る限り残す為には再発の可能性を低くしないといけません。患者さんの歯の健康・将来を考えればラバーダムは必要です。高倉歯科マインドクリニックでは、必要に応じてラバーダムを使用して診療しています。勿論、ダムも使用します。

ラバーダムを装着した方が良い、診療内容は、

  1. 根管治療。神経をとってある、または、とらなけれならない歯
    の根の治療の場合
  2. 直接覆罩と呼ばれる、虫歯が深い際に歯の神経を残す治療の場合
  3. 治療して、詰め物を直接詰める際、だ液、血液など、他の侵入物が治療するのに妨げになる可能性がある場合

など、多岐にわたります。

現在では、マイクロスコープという顕微鏡が開発され、診療に使用されています。マイクロスコープで治療する理由は、拡大した歯を見て治療する事で治療の成功率を上げて後に、再発させないようにする為です。何度も同じ歯を治療する事はいずれ歯が割れたりして抜歯する様になってしまいます。

直接覆罩と呼ばれている治療の成功率もマイクロスコープとラバーダム防湿を使う事により、格段に良くなりました。
昔では、考えられませんが、歯の神経を見ながら治療が出来るのです。
医科の脳外科や眼科が使用して治療するのと同じ顕微鏡を使用しているわけですので、当たり前といえばそうなのですが、確実な神経の治療が出来ます。この治療法の際にもラバーダム防湿は、強力な道具になります。

 

 

 


高倉歯科マインドクリニックが「3MIX-MP法」から「MTA治療」に変更した理由

数年前までは、虫歯の治療に3MIX-MP法を使用して治療をしてきました。

3MIX-MP法は、無痛歯科治療法のひとつです。薬を使って虫歯を痛みなく治す方法なのです。

3MIX-MP法とは?

3MIX-MP法で使用する薬剤

どんな薬を使用するのかといいますと、3MIXという名前のとおり3つの薬剤を混ぜ合わせます。その3つの薬剤はアズソール、ミノマイシン、シプロキサンという抗生剤です。この3つの抗生剤を混ぜ合わせるためにポリピレングリコールとマクロゾールという溶剤を使います。3つの抗生剤と溶剤を混ぜ合わせて出来たクリーム状の薬が3MIXーMP法で使う薬剤になります。

このクリーム状の薬剤を虫歯の穴の中に塗りこんで細菌を殺してしまう治療が3MIX-MP法です。虫歯の穴に薬剤を詰めただけでは穴から漏れてきてしまう可能性がありますので、蓋をして封鎖します。グラスアイオノマーセメントというものを使用するのですが、これは3MIX-MP法で使う薬剤と合わさると固まるのです。虫歯の穴に薬を入れて蓋をする。これだけ聞くと理にかなった治療、しかも痛みがないとなれば完璧な虫歯治療ですが、実際には、薬剤を完全に封鎖・密閉させるのは困難です。蓋は薬剤とセメントが混ざる感じになり、その味はとても苦いです。

当院で、実際に治療で使用してましたが、歯がしみる・歯が痛むといった虫歯の症状が治まるといった効果はありました。ただ、これはあくまで患者さんが痛くなくなった・沁みなくなったという効果です。

本当に虫歯菌が完全にいなくなったのか?はわからないのです。

せっかく埋めた虫歯の穴の蓋をとって詰めた薬剤をとって確認することはできません。

あくまで、痛い・しみる、といった症状さえでなければ虫歯が治った・・・患者さんはそう思うでしょうが、歯科医師としては確実に治ったとは言い切れないのです。

これが、現在、3MIX-MP法の使用を廃止にした理由です。

3MIX-MP法の代わりに、高倉歯科マインドクリニックでは、MTAを使って虫歯治療を行っています。

これからその理由を説明します。

文章の中で、難しい言葉や専門用語も出てきてしまいますが、薬剤名や歯科材料の化学反応という専門的な事柄の為、ご理解ください。

3MIX-MP法は虫歯菌だけでなく歯の神経をダメにしてしまう可能性があります。

先に申し上げたとおり、3MIX-MP法は、痛みに対しては、痛くなくなるという効果が出ていますが、実際にどれだけの細菌が死んだかどうかは、分かりません。さらに、3MIX-MP法で治療しても菌だけでなく歯の神経が死んでしまう場合もあるようです。

3MIX-MP法で歯の神経が死んでしまった歯は、黄色く変色します。黄色への変色の問題点は、健康な歯質とそうでない歯質の区別が困難になること。健康な歯でも黄味がかった色の方はたくさんいらっしゃいます。なぜ3MIX-MP法で歯が黄色くなるかといいますと、薬剤にふくまれるミノマイシンという抗生物質が歯の色を黄色くするのです。

従って、マイクロエンドと呼ばれる根の治療においては、治療しにくくなります。マイクロエンドというのは、マイクロスコープを見ながら根の治療をする治療法です。これは、通常の根の治療法(手探り)に比べて、格段に成功率が上ります。(マイクロエンドは、保険診療の対象外になる場合があります。)

実は、3MIX-MP法は認可を受けていない治療法

3MIX-MP法自体は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会、アメリカ食品医薬品局(FDA))などから認証されていません。日本歯科保存学会でも容認されていません。

3MIX-MP法で使用する薬剤自体は認可されているものですので、患者さんの同意があれば保険適用外ですが治療で使用することはできます。

国から保険適用できる治療方法として認められていない理由に歯の変色問題もあるそうですが、最大の理由は、耐性菌が生成される恐れがあるためです。

耐性菌、つまり薬で効かなくなる細菌が発生する可能性があるのです。

細菌は非常に変異しやすいので、抗生物質の薬が効かなくなる耐性菌になってしまうと非常に危険です。身体の抵抗力が弱い高齢者や小児、また全身疾患を有する人の生命を脅かす可能性もあります。殺人バクテリア(耐性黄色ブドウ球菌)などと呼ばれている細菌の名前はニュースなどで見たことがあると思います。

まだ3MIX-MP法での耐性菌が発生した報告はないようですが、研究は進んでいない上に可能性は否定できないというわけです。

MTAを使用した治療とは?

一方、MTA(mineral trioxide aggregate) は1998年にアメリカでProRoot MTAとして製品化されました。

ProRoot MTA(Dentsply Tulsa Dental)

MTAの成分はケイ酸ニカルシウム、ケイ酸三カルシウム等のカルシウム酸化物の複合体であるため、精製水により混ぜられたMTAの水和物は強いアルカリ性で細菌を殺菌します。

さらに、MTA水和反応生成物であるCSH(カルシウムシリケートハイドレイト)による細菌を封じ込めによる細菌の発生するのを止める効果をねらったものであるため、耐性菌が生じることはありません。

MTAは治療で使うおクスリといえますが、厳密には薬剤ではありません。無機質の生体材料です。MTAは薬剤ではないのですが、日本では2007年に薬事承認されていますので治療で使用することができます。

MTAがなぜ治療で効果を発揮するのかといいますと、まずMTAは強いアルカリ性です。その強アルカリ性が細菌を殺し、さらに材料が硬まることで密封し完全に細菌が死滅します。

MTAの硬化体が修復物(詰め物、被せ物)と接着して、セメントやCR(コンポジット レジン)などの歯に詰める詰め物との接着も良好であったという結果からもMTAは世界各国から多数の論文によりその治療効果は証明されています。このことから、細菌の2次感染に対しても、より有効な結果にはたらいていることが知られています。

近年では、MTA根充(つまりMTAを直接、歯の根の中にいれる事)によって歯の根の破折抵抗性が向上するなどの実験データも見受けられます。要は神経をとってしまった歯でも割れにくくなるという事です。

MTAの欠点は、発売当初の2007年頃は、硬化時間が長い、使い方が難しい、歯を黒く変色させる場合がある。などがありましたが、現在では、改良された製品が続々と開発されています。

当院では、現在、2種類のMTAを使いわけています。

硬化時間が長く、長年海外で実績のあるMTA(Pro Root MTA)と、短時間で硬化し歯を変色させずらくした新しいMTA(バイオMTA)の2つです。(硬化時間が短いMTAでも歯を黒くしません。)昔ながらの、ProRoot MTAも現在はさらに、改良をして現在では、歯の変色をさせない様になりました。また、バイオMTAは、2015年に発売されたばかりの製品です。初期硬化時間が150秒と短時間で固まります。

硬化時間が長いMTAは、根の治療材として。また、硬化時間が短いMTAは、虫歯が深く、直接覆罩(ちょくせつふくとう)と呼ばれる直接歯の神経が出てしまった場合の処置に使用します。根充と呼ばれている根に最終的な詰め物をする際には、硬化時間が長いMTAでゆっくりと根の先までMTAを詰めます。硬化時間が短いと作業の途中で固まってしまう場合があるからです。逆に、硬化時間が短いMTAは、神経が出てしまった場合などには効果的です。(すぐに、蓋が出来ます。)硬化時間が長いMTAでもその治療は、出来ますが、細菌感染の可能性が高まりますし、すぐには当然蓋が出来ません。

これらを、総合的に考えて、予知が明確でなく耐性菌が出来る可能性がある3MIX-MP法に比べてMTAでの治療は、より安全で確実性の高い治療法だと判断しました。これからの日本の歯科医療の進歩・発展の為、何よりも患者さんの将来を見据えた治療を考えれば、3MIX-MP法の使用を中止し、MTAでの治療法への変更は当たり前のことですよね。

歯科治療における成功率を決定づける要因とは?

歯科治療で、直接覆罩(ちょくせつふくとう)後の予後(神経が出てしまった場合の処置)、根治(根管治療)での成功率の差は治療時にどれだけ精密に出来たかが最も大切です。

いくら良い材料を使用しても、時間をかけた丁寧な治療が予後を大きく左右させます。

治療後のメインテナンス(被せ物の汚れ取り)も成功率を左右させる大きな因子です。

精密かつ精巧な治療に必要なこと

被せ物も詰め物もしっかり合わせてすき間なくつくり細菌を再感染させないことが大切です。とにかくひたすら精密に精巧に治療することが歯科治療においては肝です。

ですが肉眼・ルーペによる昔ながらの治療では不可能なのです。

高倉歯科マインドクリニックではマイクロスコープを使った「見える治療」にとことんこだわっています。

マクロスコープとは?