高倉歯科マインドクリニックが「3MIX-MP法」から「MTA治療」に変更した理由

数年前までは、虫歯の治療に3MIX-MP法を使用して治療をしてきました。

3MIX-MP法は、無痛歯科治療法のひとつです。薬を使って虫歯を痛みなく治す方法なのです。

3MIX-MP法とは?

3MIX-MP法で使用する薬剤

どんな薬を使用するのかといいますと、3MIXという名前のとおり3つの薬剤を混ぜ合わせます。その3つの薬剤はアズソール、ミノマイシン、シプロキサンという抗生剤です。この3つの抗生剤を混ぜ合わせるためにポリピレングリコールとマクロゾールという溶剤を使います。3つの抗生剤と溶剤を混ぜ合わせて出来たクリーム状の薬が3MIXーMP法で使う薬剤になります。

このクリーム状の薬剤を虫歯の穴の中に塗りこんで細菌を殺してしまう治療が3MIX-MP法です。虫歯の穴に薬剤を詰めただけでは穴から漏れてきてしまう可能性がありますので、蓋をして封鎖します。グラスアイオノマーセメントというものを使用するのですが、これは3MIX-MP法で使う薬剤と合わさると固まるのです。虫歯の穴に薬を入れて蓋をする。これだけ聞くと理にかなった治療、しかも痛みがないとなれば完璧な虫歯治療ですが、実際には、薬剤を完全に封鎖・密閉させるのは困難です。蓋は薬剤とセメントが混ざる感じになり、その味はとても苦いです。

当院で、実際に治療で使用してましたが、歯がしみる・歯が痛むといった虫歯の症状が治まるといった効果はありました。ただ、これはあくまで患者さんが痛くなくなった・沁みなくなったという効果です。

本当に虫歯菌が完全にいなくなったのか?はわからないのです。

せっかく埋めた虫歯の穴の蓋をとって詰めた薬剤をとって確認することはできません。

あくまで、痛い・しみる、といった症状さえでなければ虫歯が治った・・・患者さんはそう思うでしょうが、歯科医師としては確実に治ったとは言い切れないのです。

これが、現在、3MIX-MP法の使用を廃止にした理由です。

3MIX-MP法の代わりに、高倉歯科マインドクリニックでは、MTAを使って虫歯治療を行っています。

これからその理由を説明します。

文章の中で、難しい言葉や専門用語も出てきてしまいますが、薬剤名や歯科材料の化学反応という専門的な事柄の為、ご理解ください。

3MIX-MP法は虫歯菌だけでなく歯の神経をダメにしてしまう可能性があります。

先に申し上げたとおり、3MIX-MP法は、痛みに対しては、痛くなくなるという効果が出ていますが、実際にどれだけの細菌が死んだかどうかは、分かりません。さらに、3MIX-MP法で治療しても菌だけでなく歯の神経が死んでしまう場合もあるようです。

3MIX-MP法で歯の神経が死んでしまった歯は、黄色く変色します。黄色への変色の問題点は、健康な歯質とそうでない歯質の区別が困難になること。健康な歯でも黄味がかった色の方はたくさんいらっしゃいます。なぜ3MIX-MP法で歯が黄色くなるかといいますと、薬剤にふくまれるミノマイシンという抗生物質が歯の色を黄色くするのです。

従って、マイクロエンドと呼ばれる根の治療においては、治療しにくくなります。マイクロエンドというのは、マイクロスコープを見ながら根の治療をする治療法です。これは、通常の根の治療法(手探り)に比べて、格段に成功率が上ります。(マイクロエンドは、保険診療の対象外になる場合があります。)

実は、3MIX-MP法は認可を受けていない治療法

3MIX-MP法自体は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会、アメリカ食品医薬品局(FDA))などから認証されていません。日本歯科保存学会でも容認されていません。

3MIX-MP法で使用する薬剤自体は認可されているものですので、患者さんの同意があれば保険適用外ですが治療で使用することはできます。

国から保険適用できる治療方法として認められていない理由に歯の変色問題もあるそうですが、最大の理由は、耐性菌が生成される恐れがあるためです。

耐性菌、つまり薬で効かなくなる細菌が発生する可能性があるのです。

細菌は非常に変異しやすいので、抗生物質の薬が効かなくなる耐性菌になってしまうと非常に危険です。身体の抵抗力が弱い高齢者や小児、また全身疾患を有する人の生命を脅かす可能性もあります。殺人バクテリア(耐性黄色ブドウ球菌)などと呼ばれている細菌の名前はニュースなどで見たことがあると思います。

まだ3MIX-MP法での耐性菌が発生した報告はないようですが、研究は進んでいない上に可能性は否定できないというわけです。

MTAを使用した治療とは?

一方、MTA(mineral trioxide aggregate) は1998年にアメリカでProRoot MTAとして製品化されました。

ProRoot MTA(Dentsply Tulsa Dental)

MTAの成分はケイ酸ニカルシウム、ケイ酸三カルシウム等のカルシウム酸化物の複合体であるため、精製水により混ぜられたMTAの水和物は強いアルカリ性で細菌を殺菌します。

さらに、MTA水和反応生成物であるCSH(カルシウムシリケートハイドレイト)による細菌を封じ込めによる細菌の発生するのを止める効果をねらったものであるため、耐性菌が生じることはありません。

MTAは治療で使うおクスリといえますが、厳密には薬剤ではありません。無機質の生体材料です。MTAは薬剤ではないのですが、日本では2007年に薬事承認されていますので治療で使用することができます。

MTAがなぜ治療で効果を発揮するのかといいますと、まずMTAは強いアルカリ性です。その強アルカリ性が細菌を殺し、さらに材料が硬まることで密封し完全に細菌が死滅します。

MTAの硬化体が修復物(詰め物、被せ物)と接着して、セメントやCR(コンポジット レジン)などの歯に詰める詰め物との接着も良好であったという結果からもMTAは世界各国から多数の論文によりその治療効果は証明されています。このことから、細菌の2次感染に対しても、より有効な結果にはたらいていることが知られています。

近年では、MTA根充(つまりMTAを直接、歯の根の中にいれる事)によって歯の根の破折抵抗性が向上するなどの実験データも見受けられます。要は神経をとってしまった歯でも割れにくくなるという事です。

MTAの欠点は、発売当初の2007年頃は、硬化時間が長い、使い方が難しい、歯を黒く変色させる場合がある。などがありましたが、現在では、改良された製品が続々と開発されています。

当院では、現在、2種類のMTAを使いわけています。

硬化時間が長く、長年海外で実績のあるMTA(Pro Root MTA)と、短時間で硬化し歯を変色させずらくした新しいMTA(バイオMTA)の2つです。(硬化時間が短いMTAでも歯を黒くしません。)昔ながらの、ProRoot MTAも現在はさらに、改良をして現在では、歯の変色をさせない様になりました。また、バイオMTAは、2015年に発売されたばかりの製品です。初期硬化時間が150秒と短時間で固まります。

硬化時間が長いMTAは、根の治療材として。また、硬化時間が短いMTAは、虫歯が深く、直接覆罩(ちょくせつふくとう)と呼ばれる直接歯の神経が出てしまった場合の処置に使用します。根充と呼ばれている根に最終的な詰め物をする際には、硬化時間が長いMTAでゆっくりと根の先までMTAを詰めます。硬化時間が短いと作業の途中で固まってしまう場合があるからです。逆に、硬化時間が短いMTAは、神経が出てしまった場合などには効果的です。(すぐに、蓋が出来ます。)硬化時間が長いMTAでもその治療は、出来ますが、細菌感染の可能性が高まりますし、すぐには当然蓋が出来ません。

これらを、総合的に考えて、予知が明確でなく耐性菌が出来る可能性がある3MIX-MP法に比べてMTAでの治療は、より安全で確実性の高い治療法だと判断しました。これからの日本の歯科医療の進歩・発展の為、何よりも患者さんの将来を見据えた治療を考えれば、3MIX-MP法の使用を中止し、MTAでの治療法への変更は当たり前のことですよね。

歯科治療における成功率を決定づける要因とは?

歯科治療で、直接覆罩(ちょくせつふくとう)後の予後(神経が出てしまった場合の処置)、根治(根管治療)での成功率の差は治療時にどれだけ精密に出来たかが最も大切です。

いくら良い材料を使用しても、時間をかけた丁寧な治療が予後を大きく左右させます。

治療後のメインテナンス(被せ物の汚れ取り)も成功率を左右させる大きな因子です。

精密かつ精巧な治療に必要なこと

被せ物も詰め物もしっかり合わせてすき間なくつくり細菌を再感染させないことが大切です。とにかくひたすら精密に精巧に治療することが歯科治療においては肝です。

ですが肉眼・ルーペによる昔ながらの治療では不可能なのです。

高倉歯科マインドクリニックではマイクロスコープを使った「見える治療」にとことんこだわっています。

マクロスコープとは?

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世田谷区の松原(明大前~下高井戸エリア)で高倉歯科マインドクリニックを平成元年に開業しました。マインドというのは、患者さんの気持ちに応えられる治療ができる医者でありたいという強い思いを込めています。 歯の健康と一本でも多くの歯を残していただくために、最新の治療を積極的に取り入れ、最新の治療が最良の治療であるべきです。 歯でお悩みの方がいたら一人でも多く助けてあげたい、地域医療へ貢献したい、そして、「かかりつけの歯医者さん」として患者さんに選んでいただけるよう、日々診療に励んでおります。

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