歯の寿命を決めるのは「あなた」です。

年をとるにつれて歯が無くなる、ということは誰もが何となく思い描いていることのはずです。

80歳超えても、歯がいっぱい残っている方と、そうでない方がいます。

日本人は歯を失いすぎている民族だと思います。それは、歯に対する意識が薄く、予防という習慣が根付いていないためです。とはいいましても、昔に比べれば随分と改善されつつあります。予防歯科という言葉もわりと一般的になってきました。

歯の寿命を延ばす方法via:8020運動

8020運動というものがあります。ハチマルニイマル運動と読みます。これは80歳になった時に20本の歯が残っていることを目標とする運動です。このような運動の効果もあって、2011年のデータによれば後期高齢者(75歳以上)で20本以上の歯を持つ人は37%とのことです。75歳以上の方の歯の平均本数は13本ほどです。なんと1970年代は平均で5本未満だったので、飛躍的な進歩を遂げたといえますね。

でも、まだまだです。最低でも二人に一人、50%以上の人に20本以上残っていて欲しいものです。

そのためには、日常生活において何も問題がなくても、1年に1回でもよいので歯の定期健診を受けて下さい。

ところで、歯の本数を20本といわれても、皆さんは子供や大人が何本ぐらい歯があるかご存知ですか?

人間の歯は進化の過程で減りつつあります。

子供では20本、大人では28本です。この28本という本数は親知らずを除いた数字です。親知らずが全部生えている人では32本になります。

親知らずも「歯」です。

しかし、4本全て生えている人もいれば、1,2本だけ生えている人もいます。これは何故なのでしょうか?

親知らずの存在は、人類の進化と密接に関係しています。

サル(現在の猿ではなく、類人猿との共通祖先)から進化した私たち人類は、サルの時代には持っていた尻尾を、持たなくなりました。なぜ持たなくなったかといいますと、木の上でなく地上で暮らすようになり必要としなくなったためと考えられています。とはいいましても、人間は胎児の初期段階では尻尾はあり、生まれてくるころにはなくなっています。時として尻尾が生えたまま生まれてくるケースもあります。外見上、尻尾はなくても、人間には尾骨という骨があり、尾骨を形成する尾椎の数は人によってことなります。尾椎の数が人によって異なる、というのは、親知らずと似ていますね。

退化(進化とも言えますね)した尻尾と同じように、親知らずは現代人にとって不必要になりつつあるのです。その原因は、食べ物の変化です。火を使うようになり、道具も進化したため、人は柔らかい食べ物が食べられるようになりました。つまり、しっかりと物を噛まなくても食べることができるようになったのです。モノを噛むという動作は頭〜首周辺までの広範囲の筋肉を使います。柔らかいものを食べるのに、そこまでの筋肉および歯を使う必要がなくなったため、顎は小さく、歯の本数が少なくなりつつあります。

親知らずを除いた歯の本数が28本でない場合

親知らず以外の歯では、一生に一度だけ生え変わる歯が20本(乳歯ですね)、一度も生え変わらない歯が8本あります。これら28本の歯は、一度失うと二度と生えてきません。28本の歯が揃っていないという方は少なくありません。もともと持っている歯を失う原因のほとんどが虫歯・歯周病によるものです。特殊な例として、生まれつき歯の本数が少ないことや、痛ましいことですが大怪我によってなくなってしまったりすることもあります。

歳を取ると歯って抜けるの?

入れ歯ときくと、おじいちゃん・おばあちゃんをイメージされる方が多いと思います。歳を取れば、毛髪同様、歯は抜けていくもの。そんな風になんとなく思われていると思います。老化によって歯が抜けることはあります。

では、老化で歯が抜ける原因はなんなのでしょうか?

歯が抜ける原因のひとつに寿命があります。歯には寿命があるのです。耐久性は個人差はありますが、人間の平均寿命から考えて、100年以上持つようには作られていないのは明らかです。歯の寿命は大体60年くらいと言われています。乳歯→永久歯に生え変わってから60年というと大体70歳くらいですね。

歯の寿命を迎えるということは、最終的に歯が抜けてしまうということを意味します。日本人は80歳で残っている歯の本数は平均で10本に満たないと言われています。しかし人によっては20本以上残っていらっしゃる方も。

歯の寿命とその寿命を決定する要因について

歯の寿命といっても、最初から決められたものではありません。歯が抜けたら、それを寿命としているということですので、歯が抜けてしまう原因まで掘り下げてみましょう。

老化によって歯が抜ける原因で、もっとも多いのが「破折」です。はせつ、と読みます。破れる・折れる、という漢字ですので、歯が砕けてしまうような恐ろしい感じがしてしまいますが、分かりやすくいいますと「歯の老朽化」です。

歯も臓器の一部です。何十年と使っていれば、それなりのダメージをうけていると思ってください。これは、神経がある歯でも、ない歯でも起こりうることです。歯はすり減っていくものなのです。

実際のところ、歯の老朽化は、外見だけではよくわかりません。外見は普通でも、ヒビが入っていて突然割れてしまうなんてことはよくあります。これは、神経がない歯ですと、神経がある歯よりも顕著です。

神経がある歯の破折は、咬むと違和感から始まり、いずれしみるようになります。また、神経のない歯の破折は、いきなり痛みが出てきて、歯茎が腫れるようになります。

とにかく大切なのは神経!歯の神経は出来る限り残すことが大切です。

ただ、神経が残っている歯でも、加齢によって歯髄とう神経のかたまりがだんだん小さくなってなくなってしまいます。(歯髄腔の狭さくと言われています。)これが原因で、歯がかけてしまう場合もあります。この歯の神経の狭窄は、一般的に80歳以上の方であれば皆起こることです。

割れてしまった歯は、残しておくことは・・・難しいです。老人の方の疲労骨折は良く聞く話だと思いますが、やはり歯も骨折して割れてしまう場合があるという事です。普通の骨でしたら、骨折しても元に戻りますが、歯は折れてしまったらおしまいです。

もう一つ、老化により歯が抜ける原因として「老化による顎の骨の縮み」があります。

歳をとると、身長が縮んでいきますよね。顎の骨も同じなのです。約1年間で0.1ミリ、10年間だと1ミリです。80歳ですと20歳から60年ですので約6ミリ程縮むのです。年を取って小さくなったと感じるのは、骨の縮みによる影響が実はもっとも大きいかもしれません。

歯の根の長さは、個人差がありますが、仮に根の長さが12ミリだとすると、80歳では、骨に埋まっている根は、約6ミリ。どうしても浅くなってしまうのです。これに加えて、咬みあわせの病気、咬合性外傷などが加わると歯が炎症を起こして抜けてしまう場合もあります。

このように、老化によって歯が抜ける・欠けてしまうことは避けることができませんが、神経の有無によって、その時期は大きな差が生じます。神経のない歯の寿命は、15−20年といわれています。

歯並びをキレイに見せるための矯正のために、抜歯するというケースもありますが、健康な歯を抜くことは絶対によいことではありません!

老化によって歯を失うにしても、できるだけ多く残した方がよい理由

一本でも多くの歯を残すこと、これはどなたでも「よいこと」であると、なんとなく理解していらっしゃるはずです。

一本の歯というと、たかが一本かもしれませんが、されど一本。その一本が大切です。

歯の大切さを理解するためには、歯が無くなったときの口の中の変化を理解することが大切です。

変化というよりも、歯が無いことによるデメリットを知っておいていただきたいと思います。差し歯やインプラント、入れ歯にすればOK、ということではありません。それでも補えきれない損失は絶対的にあるのです。

歯の数は全部で28本とあると書きましたが、何らかの理由でその数よりも減ってしまった時にお口の中では様々な変化が起こり始めます。その変化は私たちが慣れるようにゆっくりと進んでいきますので、深刻な状況になるまで気づかないなんてことも珍しくありません。

歯は移動します。

歯が抜けてしまいますと、抜けた歯に隣接していた左右の歯や、無い歯とかみ合う上下の歯は、少しずつ徐々に徐々に移動します。つまり、かみあわせが変化します。その噛み合わせが大きく崩れてくると、 あごの筋肉や顎の関節にまで影響がでてきます。

声を出すということと歯は密接に関係しています。例えば前歯が無くなると喋りずらくなります。一方、奥歯の数が減ってくると、明瞭な声でなくなります。相手に伝わりにくい声になります。そして、奥歯が減ると“食べ物を咬む能力”は、急激に落ちてしまい食事がしづらくなります。このような、数々の不便な問題が起こることは避けられません。何よりも、モノをきちんと咬むことが出来ない→食事ができない→健康を害します。原因不明の疾患に悩まされる可能性も否定できません。それだけ、よく噛んで、口の中で消化するという行為は生きていく上で大切なのです。そのように体はできているからです。

患者さんの歯に問題が起きたときになるべく早く治療を終えることを望むと思いますが、一度移動した歯をキレイに治すのに時に年単位の時間が必要になることもあります。そのようにならないためにも、ご自身のお口の中を日ごろからのメンテナンスをしてあげましょう。予防が大切ということです。

歯が減ると顔が変わってしまいます。

歯が無いと食べづらい等の他に、顔に変化が出ます。自分では些細な変化と思っていても相手に与える印象を大きいものです。人の印象を左右する口元は、年齢を重ねるとしわができてきますが、そのしわのでき方に歯がかかわっていることもあります。通常、人の前歯は垂直に生えているのではなく少し外側に傾いているので、唇を前に押しのけてくれています。ですが、押しのけてくれるはずの歯が無くなってしまうと、たるんた唇がしわとなってしまいます。このように口元にしわができてしまうと、見た目にも年をとっているように感じられます。歯科ではこれを老人用顔貌と表現します。また、奥の歯の数が少なくなると上の前歯がだんだん前に押されて出っ歯になってしまったり、歯がすいてきたりすることもあります。昔と歯の生え方が変わったりしていませんか?

いつまでも若々しくいるためにもしっかりと歯を残すことが大切です。

歯がなくても食事は一応できます。しかし、問題はあります!

歯が無くても食事ができる方は勿論いらっしゃいますが、実際は本当に問題がないかというと、ないわけではありません。全ての歯がない人で、入れ歯を装着していない方の多くは舌ですりつぶしながらの食事となります。ですから軟らかいもの、流動食しか食べることはできません。入れ歯を入れるということは、どうしても違和感を感じます。それが嫌だったり、入れ歯を装着するのが煩わしいといった理由で、入れ歯が必要な状態でも入れ歯を装着していない方もいらっしゃいます。ですが、体の健康・栄養面を考えると、入れ歯や繋がったかぶせ物を装着することが望ましいです。

また、歯が無くなってしまうと食事は歯肉でするため、歯と違って歯ぐきは歯ごたえ等の細かい感覚が判りづらくなります。全てを舌で判断・判別しているわけではないのです。例えば、そばとうどんの違いが判りにくくなってしまいます。どんな食事でもおいしく食べれるようにするためにも歯をなくさないようにしましょう。

歯がないと、食事だけでなく、話すことも億劫になったり、口を動かす行為自体が減ります。口を動かす、噛む、という行為は、脳への大切な刺激です。

神経がある歯を一本でも多く残すことが望ましいのですが、なかなか難しいことです。歯を失ってしまったら、放置せず、入れ歯・インプラント・ブリッジを歯科医院で検討して下さい。そして、常日頃から、定期的に歯科に通うという習慣を身につけていただきたいというのが歯科医師として心から思うことです。私の歯科医院に来て欲しいということではないですよ。

ご自身の歯を意識する、ということは、自分自身に目を向ける、ことになります。生きるために、食べる・飲む・呼吸する・話す・笑う・・・すべての始まりは「口」です。歯を意識するというこは、お口の中を意識するということと同じです。何事もスタートが肝心です。心身の健康は、お口の健康から、というのは決して言い過ぎではないと思います。

参考までに夢占いで歯が抜けるのは世界共通で身内の不幸や、病気などの良くないイメージだそうです。それだけ歯がなくなることは良い事ではありません。

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世田谷区の松原(明大前~下高井戸エリア)で高倉歯科マインドクリニックを平成元年に開業しました。マインドというのは、患者さんの気持ちに応える医者でありたいという強い思いを込めています。 歯でお悩みの方がいたら一人でも多く助けてあげたい、地域医療へ貢献したい、そして、日本一の「街の歯医者さん」になるために日々診療にはげんでおります。

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