歯の減りの治療とナイトガード、リカンタリング

ナイトガードについて

ナイトガードとは、就寝中である夜(ナイト)に歯ぎしりを予防(ガード)するためのマウスピースの呼び名です。

歯ぎしり予防のためのマウスピース

ですので一般的な歯科医院のナイトガードは、歯ぎしりの防止、歯ぎしりによって歯周組織への過度の負荷がかからないようにすることを目的としています。歯ぎしりは、食事をする際の2倍の力で噛みしめているともいわれています。当院のナイトガードは、その目的と考え方がちょっと違います。

歯ぎしりの原因で、唯一わかっているのはストレス(現代の悩ましい社会では仕方ない事なのですが。)です。後は、噛み合わせの問題もあるでしょう。おそらく様々な原因があり明確な答えを出すのは難しいと思います。

歯ぎしりは就寝中に起きるわけですが、REM睡眠中、つまり浅い眠りの時に起きるといわれています。歯ぎしりの原因としてあげられているストレス、そして夢が関係しているのでしょうか。歯ぎしりをやめたい、と言いましてもこれは現実的に難しい事です。

そもそも歯ぎしりって悪いことなのでしょうか?

実は、程度の差はあれ、人間は皆歯ぎしりをしているのです。英語ではブラキシズム(Bruxism)といいます。

モノを噛む筋肉というのは、無意識に動く筋肉も含まれています。

歯ぎしりが気になる、という方は、ご自身での自覚でなく、ご家族や恋人に「うるさい」と言われたためではないでしょうか。

人間が無意識に行っている行動には、必ず意味があります。歯ぎしりをすることにも意味があるはずです。近年よく言われているのが、睡眠中に胃から喉に向かって上がってくる胃酸を中和するために唾液を出すために、歯ぎしりをするという説です。逆流性食道炎の人は、歯ぎしりをよくするといいます。逆流性食道炎を抑える薬を服用すると歯ぎしりが減ったという話もあります。

確かに理にかなっていると思います。であれば、自己防衛本能に基づいた行動、つまり歯ぎしりはよいこと、といえますね。しかし、歯ぎしりは、体の不調を訴えるサインともいえますね。

よい歯ぎしりと悪い歯ぎしり

歯ぎしりが人間が睡眠中に行う生理現象であっても、奥歯がすり減って平たくなってしまうような歯ぎしりは歯にとってよくないことです。それに、そこまで力が強いとなると、顎、首、肩に相当な負担がかかっていることでしょう。歯ぎしりが実は肩こりの原因ということもありえるはずです。

歯ぎしりの仕方に問題がある場合、その原因はおそらく歯ではありません。先ほど述べたストレスであったり、胃酸過多の可能性もあります。遺伝が原因説もあります。本当の原因はわかっておらず、人によって様々な原因があるのでしょう。人によって異なるとはいえ、原因がわかり解消されたら、ひどい歯ぎしりはしなくなるかもしれません。

歯に過度の負担をかけない歯ぎしりは、よい歯ぎしりともいえると思います。

歯をすり減らしてしまうような強い歯ぎしりは、悪い歯ぎしりともいえるでしょう。

例えばですが、高価な詰め物、被せ物(クラウン)をされている方、インプラントで高価な被せ物を入れていらっしゃる方、歯ぎしりが原因で割れたり、欠けたり・・・なんてこともあるかもしれません。

ナイトガードを実際に付ける場合

ナイトガードを実際につける場合、最初は誰もが抵抗があると思いますが、効果的に使えば良いものなのでぜひ検討される方は参考にしてみてください。

目的によってことなるナイトガードの種類

先ず、ナイトガードを作る気になったら歯型を取らなくてはなりません。
ナイトガードは2つの種類があり、目的によって取るべき型が違います。

1つ目は、くいしばり防止の為に使用するケースです。
この場合は、上の歯型のみ型をとります。

2つ目は、くいしばり防止に加え、歯を減らさず、顎の安定も図るケースです。
この場合は、上の歯型だけでなく、下の歯型、更には咬みあわせまで取る必要があります。

ナイトガードとマウスピースは全く別のものです

余談ですが、稀に「ナイトガードとマウスピースは一緒ですか?」聞かれることがあります。

確かに、ナイトガードとマウスピースは、歯を守るという点では、ほぼ同じ役割です。
ただ、
ナイトガードは、自分の咬みあわせから歯を減らさず、顎の安定、を目的としているのに対して、
マウスピースは、外部の衝撃から歯を守るという目的で利用されます。
なので、マウスピースは、外部の力を緩和するために厚み、柔らかさが全く異なります。
ボクシングの際に口に入れる物はもちろんマウスピースです。

ナイトガードに保険は適応可能なケースが多いです(一部ケースを除く)

初めてナイトガードを利用される方が気にされるのは、費用面かと思います。

ナイトガードを利用する際、くいしばりの強い方は疾患として扱われますので、保険適応になります。
一方で、将来的に予防の観点で装着するナイトガードは、自費になります。

保険適応化どうかの判断は、通院される歯医者さんが決めるかと思いますので聞いてみてください。
ただ、個人的には、ナイトガードの利用する必要がある方は、疾患として扱われるケースが多いかと思います。(※詳細は通院される歯医者さんへ)

歯科医師として出来ることは、歯の減りを予防するための提案です。

仮にストレスが悪い歯ぎしりの原因だとしても、歯科医師としてストレスをとることはできません。食生活や生活リズムの改善を奨めることは出来ても、これは誰でも言えることです。

歯科医師としてできることは、歯ぎしりによる歯の減りをできるだけ少なくするということです。

それがナイトガードです。当院のナイトガードの目的は、歯ぎしりの予防ではなく、歯の減りを無くしていくこと。これに尽きます。

夜、寝ていて食いしばったり、歯ぎしりをすると、上下の歯が強い力で擦れて行きます。 つまり、歯はどんどん減っていきます。減ると奥歯は段々と平らになっていきます。また、同じように前歯も減ります。

歯周病や虫歯も高度な治療方法や予防処置により抜歯することなく残すことができる様になった現在、将来の歯の健康を考えた場合、気になるのは上下の歯の減り方です。

歯というものは、人間だけでなく動物もみな同じなのですが、徐々にと減っていくものです。 ですから、それを少しでも減らそうというのが、当院のナイトガードの本当の目的です。

食いしばりや歯ぎしりによる歯の減りを軽減させるために夜間の就寝中にナイトガードを装着していただきたいですね。

当院オリジナルのナイトガードは、常にきちんと全部の歯が当たる様に調整されています。勿論、一定の期間を設けての点検も行ないます。

ナイトガードが、顎の関節症状の改善にも繋がる場合も見受けられます。(これは、経験から来るものですが…)

ここで余談ですが、人の歯の硬さは、実は、鉄よりも硬いのです。歯の表面のエナメル質は、ほぼ水晶と同じ位の硬さなんです。(ちなみに硬さを表すのに、モース硬度というのがあります。鉄のモース硬度は5,歯のエナメル質は、硬度7です。硬度10は、ダイヤモンドです。つまり歯は硬いんですよ。)

顎の関節症状の改善も少しは期待できるという意味でも、歯の減りを軽減する目的では、ナイトガードをお薦めします。ナイトガードが歯の減りを少しでも減少させてくれたら幸いです。

人間の歯の中で一番大切なのは、ズバリ「奥歯」です。

奥歯は前歯に比べて頑丈と思われがちですが、なんと前歯とくらべて平均寿命は約10年も短いんですよ。ものを噛むときに奥歯にかかる力は体重と同じくらいです。奥歯一本失うだけで、噛む力は一気に落ちます。つまり、食事の消化、吸収にも悪影響がでます。そして、噛む力と脳は密接な関係にあります。歯の残数と認知症の関係も近年では多く報告されています。奥歯を失うと、体全体に影響が出る、というのは言い過ぎではありません。

最後に忘れてはいけないのは、奥歯は顔の表情をつくる上でも重要です。顔の輪郭を形成するのは顔の筋肉です。しっかり噛むことができれば、顔の筋肉も衰えません。表情や笑顔にハリを与えるのが健康な奥歯です。

そんな大切な奥歯を、出来るだけ永く残してあげたいのです。

では、減った前歯は、どうなるの?

前歯は、奥歯と同じように減ると薄くなります。(奥歯は平らになりますが上の前歯は、裏側が減ります。)

薄くなった前歯は、欠けていきます。これは、結構みっともなくなります。(きっぱり)そこで、当院では、リカンタリング(recontouring)という治療をしています。

contouringとは輪郭削りの意味で、それをre-contouring、つまり再形成するのです。このrecontouringを歯科では形態修正の意味で使います。

具体的には、リカンタリングという治療は、薄くなってきた前歯を削って、厚みを出し、隣の歯と切端を並べる治療の事です。(審美歯科治療としては、定着しています。)外国人の人で、前歯から糸切り歯の手前まで、真っ直ぐ綺麗に並んだ歯をみる事がありますよね。

特に、肉食系の外国人は、前歯で肉を食いちぎる為に、薄くなる前から、前歯の先を削って厚くしておく場合もあります。

歯を削って並べるのが良いとされている人も多いようです。(文化の違いですが、海外では、ギザギザの歯は幼いと見られて、嫌われています。)

最近、日本でも外国人の真っ直ぐに揃った歯を羨ましく思う人も多くなってきています

でも、前歯も出来れば、リカンタリングしたくないですよね。

とにかく、歯を減らさない!!

これにつきます。

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世田谷区の松原(明大前~下高井戸エリア)で高倉歯科マインドクリニックを平成元年に開業しました。マインドというのは、患者さんの気持ちに応えられる治療ができる医者でありたいという強い思いを込めています。 歯の健康と一本でも多くの歯を残していただくために、最新の治療を積極的に取り入れ、最新の治療が最良の治療であるべきです。 歯でお悩みの方がいたら一人でも多く助けてあげたい、地域医療へ貢献したい、そして、「かかりつけの歯医者さん」として患者さんに選んでいただけるよう、日々診療に励んでおります。

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