歯は一度傷つくと元には戻りません。

歯の表面は、エナメル質といいます。つまり歯で通常目に見える部分が、このエナメル質です。そして人間の体の中で最も硬い部位です。いくら硬くても酸には弱く溶けてしまいます。エナメル質が溶けて穴があき、そこから菌によって歯が侵されることを虫歯といいます。 体の大半の部分は傷つくと自己修復する力を持っていますが、歯のエナメル質にはその力がありません。ただし、エナメル質自体は脱灰と再石灰化を常に繰り返しています。エナメル質が酸によってミネラルなどが溶け出すことを脱灰といい、再び戻っていくことを再石灰といいます。実は、これはお口の中で常に起っていることなのです。つまりごく小さなむし歯でしたら様子をみることができます。再石灰化を促すような治療もあります。ただし、基本的に削った部分は再生しませんし、永久歯を抜いたら生えてきません。 むし歯や歯周病の治療において、歯を削ったり神経を抜くことを最小限に抑えるために、原因菌を薬で殺菌する方法はあります。しかし、薬にはまだまだ副作用の問題、痛みの出現などがあり完全には解決していません。

欧米の人の歯ってキレイだと思いませんか?

日本では「予防歯科に通う」ことが、一般的に習慣になっていないと思います。ところが、欧米では歯科での検診やクリーニングを行うことは当たり前になっている国が多く、例えばスウェーデンでは国民全体の90%、アメリカにおいても80%に上るという統計データもございます。これは文化の違いの影響も大きいと思われます。日本と違って人とのコミュニケーションの手段としてキスが日常生活の中にあります。ですから「お口」に対する意識がもともと強く、それが子どもの時からの歯の予防につながっているのでしょう。歯の予防への意識の高さは、高齢時の歯の残存数にも差が出るようです。

歯の予防…ぜひ真剣に考えてみてください。

私が力を入れている予防歯科とは「お口の中の健康を生涯維持し、美しい歯を育てる」こと、それは体の健康にもつながることだと考えています。 そして、歯が多く残っているということは、いくつになっても、美味しく食事ができる、ことにもつながります。さらに、自分の歯で噛むことができるということは脳を刺激するので、認知症などにもかかりにくいのです。 お口の中には様々な菌がいます。菌といっても良い菌もいますし、悪い菌もいます。悪い菌の中には、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化、早産、肺炎、ガンなどに悪影響があると言われているものもあります。 お口の中の健康は、体全体の健康にもつながると思います。